レースから既に2週間以上が経つこのタイミングで、レースに関する事を書くのも読んで頂くのも今更感がありますが、もしよければ、少々お付き合い頂けると嬉しいです。
また、今後信越五岳に出られる方にとって、少しでも役立つ内容になればとも思っています。
この記事の概略として
ちょっとおさらい!「信越五岳トレイルランニングレースの特徴」
※以下のポイントを知って頂くと、信越五岳トレイルランニングレースの世界感が分かると思います。
- 基本的に気持ちよく走れるコース。ただし、ある程度走らないと関門に引っ掛かるという時間設定。
- 100mileと110Kの2コースがある。
→ 100mileのスタート2023年9月16日(土)18時30分 / 制限時間33時間
→ 110kのスタート2023年9月17日(日) 5時30分スタート / 制限時間22時間
→ 共にゴールは18日(月)3時30分 - スタートからの20キロは同じコースを走り、その後100mile選手たちは約80キロ別のコースを走る。そして、黒姫エイド(100mileは約100キロ地点・110kは40キロ)からは、また其々の選手が同じコースを走る。
- ペーサーシステム
ペーサーとは、レースの途中から選手と共に走る伴走者の事。日頃から一緒にトレーニングする仲間や知り合い等を事前にペーサー登録し、大会側が決めたエイドからそのペーサーが選手と合流し共にゴールまで走る事が出来る。選手としては、疲れが出てくる頃にペーサーが入ることでモチベーションが上がったり、ペーサーにプッシュしてもらえる。 - エイドの数とホスピタリティーが素晴らしい
100mileは9カ所、110kは6カ所も飲み物や食べ物を摂る事が出来るエイドがある 。これプラス飲み物だけのウォーターエイドや、地元の方達による私設エイドもある。よって、110kの場合だとウォーターステーションや私設エイドを含めるとトータル10箇所エイドがあり、おおよそ10キロ前後毎にエイドがあるイメージとなる。そして、どのエイドもボランティアスタッフの方が、メチャクチャ温かい声で迎い入れてくれて、食べ物や飲み物を気持ちよく提供してくれる。だから、物質的なエネルギーと気持ち的なパワーを貰える。
数日前までノープランだったww
これは、自分の性格だから仕方がないけど、具体的なプランを立てたのは本当に数日前。勿論、頭の中でザックりとしたイメージはあったけど・・・。
先ずは、レース展開をプランニングする前に、自分の中でテーマみたいなのが決まって、それが「気持ちで走る」だった。
このテーマが自分の中で決まってからは、周りの人からレースが近づくにつれて「信越の準備どう?」なんて聞かれた時に、「気持ちで走ります。」って答えられうようになって落ち着いていく自分がいた。
で、このテーマ、実は自分の中から生まれた言葉というよりかはお客様が切欠だった。今回UTMBを完走したお客様に送ったメッセージの返信内容にこのテーマのヒントとなるような力強い言葉が書かれていたり、別の方から頂いたインスタのストーリーズの応援投稿が切欠だったりと。
そして、レース出発の前日にようやく、超具体的にレースプランを立てた。
見づらくてスミマセン。
19時間前半でゴールするなら、単純にキロ10分半
制限時間ギリギリなら、単純にキロ12分
↑この2つをかけ合わせて、黄色セルのプランが飯田のタイムスケジュール。
笹ヶ峰以降は、ペースが落ちることを予想して慌てないタイム設定。もし、順調ならキロ10分半のタイムスケジュールを狙っていく。
今まで、こんな綿密に準備を一度もした事がなかったけど、なんとなく、実際に自分が遊んでいる時に気になる事が表で分かるようになっていれば良いかと思い、数字を広い出して表にした。また、この走るペースに関しては、色々なシチュエーションを走ってCOROSの時計で記録し、あとは、レースの距離と累積標高から大体のペース配分を叩き出した。ただこのタイムスケジュール表に、区間毎の累積標高が無かった事は1つの改善点だと思った。それよりも、実は重大なミスをしており、そのミスの内容が、エイドの滞在時間が計算されていなかった事だった。
長いレースでは、エイドの滞在時間がレースに大きく影響する。
例えば、全てのエイドで10分間足を止めた場合、信越の110kでは私設エイドを含めて10箇所のエイドがある為、単純計算をしてもエイドの滞在時間だけで合計が約100分にもなってしまう。逆に全てのエイドを5分で出れれば50分短縮する事が出来る。当たり前の事だけど、エイドに滞在する時間が短ければ、休憩時間が少なくなるがレースとしては時間を短縮する事が出来る。
そんな肝心なエイドなのに、慌てて立てたタイムスケジュールには、エイドワークの時間が計画的にスケジュールされていない大チョンボ!走りながら少し焦ったけど、逆に、これがエイドを早く出る1つの切欠にもなったし、コース上でもエイドの時間を少しでも捻出する為に、足を動かし続ける事が出来たのだと思う。(まさに、気持ちだな!)
いよいよスタート
予想をしていたけど、案の定トイレ渋滞に捕まり焦りを感じながらも、スタート10分前無事に済ませす事が出来、最終の軽量化に成功。
本当はこの時点で同じ110kにエントリーしている、お客さんやメ―カーさんや他のお店のスタッフさんに会いたかったけど数名にしか会えず。
(ただ、ここであまり会えなかった事が、このレースを良い方向へ作用させるとはこの時は思いもしなかった。)
約700人近くの選手が、独特の緊張感が漂うスタートゲートの中でスタートの合図を待つ。その集団のほぼ最後部に位置をとった僕は、自分が興奮と緊張が混ざったなんとも言えない気持ちになっている事に気が付く。
今から自分にとって未知の110キロという距離のレースが始まる。
「気持ちで走る」と言い聞かせながらも、始めて走った新城のレースのような辛い展開になる最悪のケースが常に頭から離れない。
頭の中でシミュレーション出来ている部分を整理しては、シミュレーションが出来ていない部分の不安を塗り替えるように「大丈夫」と自分に言い聞かせて、気持ち冷静にしながらも気持ちを高めていった。
スタートゲート近くで石川弘樹さんの喋っている事が分かるが、その声が上手く耳に入って来ない中カウントダウンが始り、そして、スタートの合図が薄っすらと明るくなった空気の中に響き渡った。
合図と共に、今までの堰き止められていた水が流れ出るように選手たちがコースの中に吸い込まれていく。僕も、その流れに身を委ねるようにスタードゲートを潜った。
スタートから熊坂エイド(35キロ地点)まで
後方からスタートにしたにも関わらず、妙に周りのペースが早いように感じる立ち上がりに少し不安を感じた。周りの息遣いと掴めないペースに翻弄されるが、COROSに表示される数字だけを信じて、自分ペースを信じて進んでいく。
スタート直後に蜂に襲われる人も多い中で、自分は運良くその区間も過ぎる事が出来た。
次第に、東の空から角度を上げてくる太陽が、確実に気温を高くしている事を感じながらも、今はまだまだ大丈夫と落ち着いて足を進める。
正直、後方からのスタートした事で途中渋滞に巻き込まれる事もあり、スタート直後はスタート位置が後ろ過ぎたかなと焦りも感じたが、逆を言えば、周りのペースに安心してついていけるので、焦る事なくゆっくりとアップが出来た。
荒瀬原のウォーターエイドでは、マイ・カップで一口だ水を貰いコースに復帰する。
斑尾山頂にたどり着いたとき、昔に信越トレイルをスルーハイクした時の事を思い出しながら、最初のFULLサービスのある「バンフエイド」へ向かって、峠走の下りを走った有り難みを感じながらダウンヒルを気持ちよく走った。
ただ、良くも悪くも予想タイムより早いペースで進んでいる事が逆に心配になったりしたが、エイドタイムが盛り込まれていないオリジナルのタイムスケジュールに対して貯金がある事は精神的な余裕を生んだ。
走り始めてから約6時間が過ぎて到着した熊坂エイドで食べたトマトが最高に美味く、ここまで調子も良く熊坂エイドを意気揚々と出発し、約14キロ先の第一関門の黒姫エイド(49キロ地点)を目指した。
「関川」と「しそジュース」
確認不足だった。
熊坂エイドから黒姫エイド区間の途中にある関川区間があるのだが、この絶妙な薄さ登りが続く事に対して完全にノーマークだった。
レース後に振り返って高低差イメージ表を見れば、確かにゆるくて長いのが分かるが、完全に確認不足だった。
この絶妙な薄さの登り。正直、走れる斜度だけど対したスピードが出せない程。「じゃぁ~素直に歩くか!」となると、この斜度程度で歩いて時間的に大丈夫なのかと心配になってしまう。そして、その判断を更に迷わすように暑さが追い打ちを掛けてくる。「関川は暑い!」と、噂は聞いていたたが、まさか、これほど暑いとは・・・。
ただ、これも真夏に走った尾鷲トレイルに比べればと、過去の経験と対比させて前を見続けた。
そして、もう一つの確認不足が今度はラッキーを生み出した。それが、地元の方による私設エイドの「宴会エイド」だった。
自分の中で予想していなったエイドに心が安らぐ。そのエイドで飲んだ「しそジュース」がメチャクチャ美味くて、そして、水シャワーで身体を一気にクールダウン出来た事で気持ち再度高まった!また、そのタイミングでお客様や応援されているメーカーさんかの声援もあり、その後は一気に黒姫まで行く事が出来た。
やっぱり、声援は本当に力に繋がる。
黒姫(49キロ地点)から笹ヶ峰グリーンハウスエイド(60キロ地点)
ここからゴールまで昨年のペーサーで走った経験があるお陰で、レース展開に少し余裕出てくる一方で、その一年前の記憶が時折邪魔をする。
「確か、この登りの次があの下りだから、エイドまでかなり近づいているな!」と思って走っていると、実は自分の記憶の中でコースを勝手に組み替えて起きてしまった勘違いしで1人で落胆する事もあった。
笹ヶ峰エイドの手前にある「吊り橋」があるのだが、その前後に現れる「下り」と「登り」が少し厄介なんだけど、僕は勝手に近くに居た方に話しかけては、自分の気を紛らわせて自分を騙しながら足を進めた。
笹ヶ峰グリーンハウスエイド(60キロ地点)から戸隠スキー場エイド(88キロ地点)
自分がピークを向かえるのであればこの区間だと思っていた。
昨年100マイルのペーサーとして信越五岳を走っているので、あの時のペースで自分が60キロ走った時の身体の状態は予想が出来ていた。それと同時に、黒姫エイドからの残りの60キロは、前回のペーサーで一度走っている為、状況は概ね掴めている。その中でレース全体を考えた時に、不安要素の1つとして「前半の50キロ部分」があった。それは、距離やコースではなく「暑さ」に対して。昨年のペーサーは、暑さのピークを過ぎた午後から走り出し、殆どの時間は夜の涼しい時間帯を走っていたが、今回は朝日が登る少し前から走り出し、太陽が沈むまでの時間、暑さに耐えなければならない。
ようするに、前半50キロ部分で暑さの中で自分がどれぐらいダメージが出てしまうのか、そして、そのダメージを残したまま、黒姫エイドからの先の後半60キロを走る事を考えた時に、自分中でレースの山場になるのは、第2関門(黒姫エイド)から第3関門(戸隠エイド)までだと予想を立てた。
逆を言えば、ここを「気持ちで走って」戸隠エイド(88キロ地点)に無事に辿り着ければ完走は出来るとイメージしていた。
暑さと疲労のダメージが大きければ、僕は76キロ地点の大橋林道のエイドで椅子に座り込み、絶望的な状態で泣きながら「走るのか」「ここでやめるのか」という決断をしないといけないとイメージしていた。
が、しかし、結果的に僕はこの区間もずっと楽しく走ることが出来た。あのストレスを除いて・・・
次回へつづく。
投稿者:飯田