これは仕事だ。遊びではない。れっきとした仕事なんだ。
何度も何度も頭の中で反芻しました。そうしないと出張で来ている事を忘れてしまう程に最高だったから。
2025年3月の第一週目。私は北海道旭川にいました。目的は、ARC’TERYXを取り扱うディーラーが集まり、製品の勉強をしたり、セッションをして情報交換や沢山刺激を頂くディーラーズMTGに参加する為。今シーズン、本州では雪がたんまりと降っているけど、北海道旭川はどうだろうか。事前に調べてみたところ、どうやら降雪は少ない様子。
北海道に行くからには良い雪を味わいたいのが心情というもの。タイミング良く降ってくれる事を祈りながら現地へと入りました。
何度乗っても慣れない飛行機に揺られる事、約1時間半。羽田空港からほんの90分程で到着するパラダイス。飛行機から一歩出た瞬間からソワソワ感が止まりません。周囲をキョロキョロしながら沢山写真をパシャパシャ撮りたいところですが、私も40手前のよい大人。スンとすました顔を装って車へと乗りこみます。
初日は、半日が移動時間となってしまう為、午後の数時間だけゲレンデで足慣らし。旭川市街地から車で直ぐの距離にあるサンタプレゼントパークスキー場へ。ナイター営業が21時頃までやっている為、仕事後のアフターファイブで滑れてしまう(しかもナイター料金は大人¥1,700)。旭川市民の方が羨ましすぎます。
めっちゃ良い天気!とまではいきませんでしたが、逆に雲のおかげで日光が当たっていない為、雪の状態は良好。エッジがしっかり噛んで気持ち良くカービングターンが楽しめました。ただ、実のところ今季はパウダー用の板を履くのはこの日が初めて。本来であれば、他のディーラー様やメーカースタッフ様とリフト上でお話ししたりしながらノンビリ滑るのですが、明日のBCツアーまでに何としても感覚を取り戻しておかなければいけない為、一本でも多く滑走するべく半日中かっ飛ばしていました。
滑ってばかりがディーラーズMTGではありません。お仕事ですから、ちゃんと勉強してきました。
夜にはARC’TERYXスタッフ様より、フッ素不使用のゴアテックスEPEメンブレンに関してのお話し。撥水剤にもフッ素不使用となり、従来よりも撥水力が落ちてしまった…というネガティブなイメージが先行しがちではありますがその反面、環境負荷の軽減は勿論のこと、防水メンブレン自体が軽くなりしなやかにもなった事でウェア自体の軽量化や着心地の向上に繋がっているというメリットもあるのです。そして、撥水力を維持する為には適度な手入れ(お洗濯&撥水加工)が必須となります。
そのあたりもちゃんと勉強させて頂きました。アウトドア用洗剤&撥水剤を展開するSTORM。その日本正規代理店を務めているモチヅキのスタッフ様による洗濯や撥水加工に関しての重要なお話し。STORMの撥水剤は分子構造が他社のそれとは異なる為、衣服や分子同士の結合力が非常に高いのが特徴なのです。そして、moderateでも量り売りを行っており、無駄なパッケージを使用しない事でゴミを減らせるだけでなくパッケージが無い分、結構お得に洗剤と撥水剤がゲット出来ます。シーズン終わりの大洗濯の際には、売り切れてしまうかもしれませんので、お早目のご用意をお願いいたします!
しっかりとお勉強をさせて頂いた後は、美味しく夕食を頂き明日のBCツアーに向けて早めの就寝。今日、ガッツリ滑ったけど感覚がまだ取り戻せてないし、明日、皆に迷惑かけてしまったらどうしよう…なんて不安感を抱きながらベッドに入り、気が付いたらもう朝。集中して滑っていた分、疲れていたのかな…と思いながら朝食会場へ。バイキングスタイルの朝ごはんで食べ過ぎないように気を付けていても、毎回食べ過ぎてしまうのは私だけでは無いはず。
重たくなったお腹を抱えながら、車へと乗りこみ今日のフィールドへと向かいます。
フィールドへ到着後、シールを付けて歩く準備をする前に全員でショベルを出して駐車スペースを作ります。今まで沢山のBCツアーに参加させて頂きましたが、いきなりショベルの出番がきたのは初めて。笑 寒い中で雪をポイポイ投げていると自然と身体が温まってきて丁度良い準備体操になりました。
30名近くの大所帯。スキーチームが先行して、後からボードチーム。風も強く無く、気温もそこまで下がらなかったので行動中はレイヤリングがピッタリはまって終始快適。淡い期待はしないでおこうと思っていたのですが、標高700~800m程度の低山でありながらしっかりとパウダー。
期待値を大きく上回る雪質にテンションがどんどん上がっていきます。しかし、ここで調子に乗ると確実にケガをしてしまう。早く滑り出したい気持ちをグッと抑えて、歩を進めます。遊びとは言え、仕事で来させて頂いているので、歩いている際中も頭の中は仕事モード。今日の気候に対して自分レイヤリングの反省点を考えたり、他の参加者の方のレイヤリングを参考にさせて頂いたり、お店は大丈夫かな…何かトラブル起きてないかな…と色々な事が頭の中をグルグル回ります。
そうこうしていたらあっという間にドロップポイントへ。滑走モードへと切り替えて順番に滑り出したのは良かったのですが、いかんせん子育てに追われてここ数シーズンで滑りが退化してしまった自分は、一本目の滑走はパウダーが久しぶり過ぎて思うような滑りは出来ず。
格好良い先輩方の滑りを参考に何とか感覚を取り戻そうと必死でございました。
2本目から何とか感覚を取り戻し、気持ち良く滑る事が出来ました。やっぱりパウダーの浮遊感はたまりませんね。「この為に頑張って働いてんだなぁ~。」としみじみ感じる瞬間でございます。3月でこんなに気持ち良い雪が楽しめるとは思っていなかったので、気分は最高潮。このままずっと山にいたいところではありますが、スキーチームは合計3本程滑って帰還となりました。
この日の夜。ARC’TERYXがスポンサーとしているスノーボーダー布施忠 氏、テレマークスキーヤー石橋仁 氏、スキーヤー 中西太洋 氏のフィルム作品とお話しをお聞きしました。それぞれのウィンタースポーツへの向き合い方やARC’TERYXへの想い。昼間の滑りだけでなく、夜にも沢山の刺激を頂きました。
北海道の夜は永く、旭川ナイトもしっかりと堪能。沢山飲んで、沢山食べて、沢山お話しをさせて頂きました。このままオールナイトでも行けそうなテンションでしたが翌日もしっかりと滑らなければいけないので、ホテルへ戻りベッドに潜り込むと同時に熟睡。気が付けば朝を迎えておりました。
最終日はローカルスキー場で午前中だけの滑走。北海道にいるうちに一本でも多く滑っておきたかったので常に全力。ARC’TERYXライダーの中西氏の後ろを滑らせて頂きながら、その滑りの格好良さに惚れ惚れとしていました。
何本か滑るうちに、中西氏からスキー場内で少しでもパウダーを探しに行こうというご提案。そこでコース脇の木々が生い茂るゾーンへと向かったところ、予想が当たりパウダーを頂く事が出来ました。しかし、ツリーがタイトなうえに起伏にも富んだ斜面は非常にテクニカル。そこをスピーディーに滑っていく中西氏を見失わないよう着いていくのがやっとでした。自分の身体にはオーバースペックな板に乗っているうえに今季の滑走時間不足。直ぐに足がパンパンになり踏ん張りが効かなくなる中で、次々と目の前に迫る木々。何とか衝突を避けたと思ったのも束の間。隠れキャラのように存在するコブ。膝で吸収しようにも間に合わない、これは跳ぶしかない!!と割り切って思いっきりジャンプしたのは良いものの、着地後にまた直ぐ現れる木。合計3回ほどクラッシュしましたが、大きなケガも無く買ったばかりのアークのウェアが少し傷ついた程度で済ました。
30歳を過ぎて結婚をし、家庭を持った時から自分のスキーレベルは頭打ちだと思っていました。
「もうこれ以上、上手くなる事は無いだろう。だったらケガをしないように滑ろう。」
そんな気持ちでスキーをしてきましたが、今回の林間を滑り抜けていた時は全く逆。久しぶりにスキーの事だけ。今、目の前の斜面と木々の事だけで頭がいっぱいになり、世界は目の前の空間しかないのではないかと錯覚する程に必死で、夢中になっていました。昨日のBCツアー中も仕事の事やお家の事や色々な事を考えていたのですが、この日だけは、ほんの一瞬全てが消えました。無我夢中で滑っている時は全てが頭から吹き飛んだんです。
「これだ。この感覚を味わいたくって外遊びをやってたんだ。」
いつの間にか忘れてしまっていた感覚でした。自分の限界にチャレンジして、全てを出し切って全力で遊ぶ。子どもの頃には出来ていたのに、大人になってから出来なくなってしまっていた事。知識が増えた分、あれやこれやと考えすぎて。経験が増えた分、失敗した時の事を想像して臆病になっていた。スキーという遊びを通して、自分が知らないうちに変わってしまっていた事に気付かされました。ディーラーズミーティング最終日、半日の滑走でしたが自分にとってはもの凄く収穫のある日でした。
まだ、俺は上手くなれる。もっと上手くなりたい。
自分のスキー観が180°変わった日です。この経験を忘れず、他の外遊びも探求していきます。
大人になると心でブレーキを踏む必要性が沢山出てきます。だからこそ、外遊びの時は全力でアクセル踏んでいきましょう。勿論、安全は第一で。
今回お招き頂いたARC’TERYXの皆様、また一緒に滑って頂いた関係各所の皆様、3日間ありがとうございました。また、皆様とセッションさせて頂ける日を楽しみにしています。その時は、今以上に上手くなってみせるので、よろしくお願いいたします!!
本日のブログは、松下がお届けいたしました。