AXESQUIN ELEMENTS Classic Route Hiking 備忘録

ご報告が遅くなりましたが、11月に開催いたしました古道をノンビリ歩くフィールドイベント「Classic Route Hiking」の様子をご報告させて頂きます。

そもそも、Classic Route Hikingとは、AXESQUIN ELEMNTSが提唱する山遊びの一つの形で、古くから生活の道として使われている山間の道、「古道」を歴史背景や情緒を感じながらノンビリ歩くスタイルで、途中で現れるクラシックルート遺産に触れ、想いを馳せる深みある山遊びと言えます。

トレイルランニングの様な疾走感や、ピークハントの様な秀でた達成感、クライミングの様なドキドキヒリヒリした感覚を味わう事は無いのですが、山の中で過去から現在までの時の流れを感じ、昔の人達はどんな気持ちでここに道を作り生活をしていたのだろう…と想像を膨らませる事で今までの外遊びとはまた異なる充足感が得られるのが魅力なんです。過去のブログでも書かせて頂いたのですが、私はこの手の遊びはもっと年齢を重ねてから行き着くトコロだと思っていました。自分の年齢には、まだ早いのかな…なんて思ってもいたのですが、体験してみるとドはまりしてしまい今では古道を探して地図を眺めています。

前置きが長くなってしまいましたが、実際に行ったClassic Route Hikingの様子を綴らせて頂きます。

 

 

落ち葉が積もる鈴鹿山脈。一歩踏み出す度にザクザクと音が鳴る。体積した落ち葉がクッションにもなって、つい気持ち良く足並み軽やかになるところですが、その下に隠れキャラの浮石がいる事を忘れてはいけません。油断していると足を取られて大きく尻もちをつくことになります。

今回の舞台は朝明渓谷から滋賀側へと抜ける旧千種街道。

 

古くは近江商人達が伊勢へと行商に出向く際に使用していた道でもあり、あの有名な戦国武将 織田信長も通ったと言われている道でもあります。そして、この旧千種街道沿いには結構な山奥でありながら約300人程の人達が生活をしていた集落が存在しました。その集落跡地を訪れるのが今回の目的。

 

朝明渓谷を出発して根の平峠を越え、目的地までは大きなアップダウンは少ないにしろ往復約10km程とノンビリ日帰りハイキングの中では長丁場。そして途中に渡渉が何度も待ち構えているのがこのルートの楽しいポイントの一つでもあります。

 

どこを渡れば正解なのか…この石は浮いてグラグラしそうだな….あっちの石は色が変わっているから滑りそう…と色々考えるのですが、結果的に落ちずに渡れればそのルートが正解になるのです。危ぶむなかれ、行けば分かるさ!の精神で思い切って渡りましょう。沢にハマったら、その時にどうするか考えれば良いのです。

 

冬本番がそこまで来ている気温の中、ノンビリ歩く鈴鹿山脈はとても気持ち良く、何よりヒルの心配をしなくていいので気持ちがかなり楽。少し早めのペースで歩けば体がポカポカして丁度良いのでレイヤリングであまり困る事もありません。

 

そして、途中で現れる炭焼き窯の跡。クラシックルートで見られるこうした遺物を僕たちは「クラシックルート遺産」と呼んでいます。ピークハントを目的とする普通の登山であれば素通りしてしまうような物でも、クラシックルートハイキングでは立ち止まってじっくりと観察します。なぜ、この場所に炭焼き窯を作ったのだろう。ここで作った炭はどこで使っていたのだろう?いろんな「なぜ?」を頭で巡らせてその答えを想像する。正解なんて必要ないのです。想像し、思いを馳せるのがクラシックルートの楽しみ方の一つなのだから。

 

長丁場と思っていた今回のルートも、気が付けば目的地に到着。本日の目的地は御池鉱山跡地。三重県側からイブネへ向かう際には必ず通る場所でもあり、私も何度も通っている場所なのですが、今までは文字通り本当に通っているだけでした。今回は、敢えて通り過ぎていた場所に着目し深く掘ってみます。

 

早速、辺りを散策と行きたいところですが、まずは甘酒で身体を温めてゆっくりと昼食をとります。御池鉱山跡地は集落があった場所の為、平にならされている場所が多数あります。スペースも広いので調理もしやすく、ハンモックを楽しむのにもおススメな場所です。

 

お腹が満たされたところで、風が強くなってきて霙がチラホラしてきました。このままじっとしていても寒いので、周囲を散策してクラシックルート遺産を探してみます。

 

鈴鹿山脈の山中では単体で見られる事が多い炭焼き窯。私は今まで存在を知らなかったのですが、ここには中型の炭焼き窯が5つ連なった5連窯があるんです。ここで作った炭を鉱山での製鉄等に使っていたのかもしれません。

 

他にも地面に目を向ければ、当時使用されていたお皿やお椀の破片を見つける事も出来ます。鈴鹿山脈には昔に多数の鉱山が存在しており、そこで働く人達がこの集落で生活していました。昭和30年代にすべてが廃山となった事で、山中で暮らす人達もいなくなり、現在の様な跡地になっているのです。

 

足を運んだ事がある方なら分かると思いますが、こんな山奥に人が住んでたの!?と思ってしまう程の場所なんです。実際に行ってみると学校や神社の跡地もあったりして、生活の一部を感じる事が出来て、文明から離れた場所なのに生活を感じるという不思議な感覚になります。

 

神社跡に繋がる石階段で集合写真。後半は少し天気が崩れ始めて小雨と霙が入り混じった様相となりましたが、参加者の皆様は終始笑顔で楽しんで頂けて嬉しい限りです。

 

勿論、帰りも沢山の渡渉を繰り返して山を下ります。山を下りながらもクラシックルート遺産探しは続き、朝渓谷付近でとても大きな炭窯跡も見つかりました。

 

登山道から少し横にそれたところにあるのですが、この登山道も今まで何度も通っているのに全く気づきませんでした。

普段歩いている道でも意識的に何かを見つけようと目を向けるだけで大きな発見がある。非日常の空間であればそれだけで満足してしまいそうですが、そこからもう一歩踏み込んで、探して感じる遊びもクラシックルートハイキングの魅力。難しそうに感じるかもしれませんが、日々のちょっとしたコトを深めるのと一緒なんです。

夕焼けのオレンジ色がいつもより綺麗なことに気付いたり、月明かりの柔らかさを感じたり、淹れたてのコーヒーからたつ湯気の形が面白く見えたり、日々のどうでも良いことに目を向けて深く感じてみるのと一緒だと思っています。そのどうでも良いことに興味を持って集中している瞬間は、心がフラットになっている気がしますし、良い変えると仕事モードがONであればOFFになっている状態なのかもしれません。

キャラに似合わずスピリチュアル要素みたいな発言が入ってしまいましたが、子どもの頃に格好良い石や虫、綺麗な花を夢中になって探していた時の気持ちの大人版だと思ってください。歳を重ねるに連れて忘れてしまうあの時の感覚を思い出させてくれるのがクラシックルートハイキングであり、クラシックルート遺産探しなんです。

ちなみに、古道は調べてみると意外と身近に存在します。三重県では最もメジャーな熊野古道がありますが、他にも沢山の古道があります。昔から使われていた集落と集落を繋ぐ山間の道。生活の道として使われていたものが殆どなので、何気なく歩いている登山道が実は古道だったなんて事もあります。是非、皆様がお住まいの地域の古道も調べてみてください。そして歩かれる際は、クラシックルート遺産探しもお忘れなく!

本日のブログは松下がお届けいたしました。

 

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