4月の熊野古道「小辺路」(前編)

 

少し前の事、2021年の4月の上旬に三重県と奈良県を跨ぐ熊野古道「小辺路」を歩いてきた時のお話。

 

三重県の山といえば鈴鹿山脈が有名で、程近い当店にも山帰りのお客様に多くご来店いただいており、熊野古道へ行った方のお話を耳にする機会がそれほど多くなく(自分だけかもしれませんが)、石畳があったり複数ルートがあるなどの漠然としたイメージがあるばかり。

「ロングトレイルを歩きたい。」と、日頃から思ってはいたものの、自分がどれだけの重量を背負い、一日どれぐらいのペースで何時間動く事ができるのか。そして、どれくらいの距離を歩けるのか、実際にやってみなければ経験できないことも多くあり、その経験を積むために、手始めに一番身近な「熊野古道」をチョイス。また、季節としては、寒さを感じる事が少なくなる初夏も考えたが、暖かくなれば虫が多くなってしまう為、寒さを我慢しても4月に歩くことを昨年決めた。

もし、今年の春先に熊野古道やロングトレイルをチャレンジしたい方がいらっしゃれば、参考にしていただく事ができる部分もあるかもしれません。

 


 

計画では約70kmを二泊三日で歩く行程にて対して、ザックの重量は水、食料、泊まりの装備を入れて8kg程度で出発。

食料はフリーズドライなどお湯で戻すものをメインに準備し、途中で補給できる売店や自販機があるとの情報を得た上で程よい量を準備。

食べ物関係のパッキングは2袋に。1つは行動食をメインに入れた袋。もう1つは、クッカーを使って調理が必要なモノとそれに必要なクッカーを入れた。これにより、調理が必要なモノを食べる時に、その袋だけを出せば良いという考え。

 

今回は、友人との二人旅。その友人と早朝の津駅で待ち合わせ。4月の朝5時はまだ暗く冷たい風が吹き、駅のホームでは防寒着を一枚着ても少し肌寒く感じる様な季節。

和歌山県の高野山までは、公共交通機関を乗り継いで向かった。夏場のアルプスと違い、この時期に登山をされる方は少なく通勤通学の方々に混じって電車に揺られるのが少し新鮮。

目的地に向かい電車やバスを乗り継ぐ度に登山装備の方が増えていく。公共交通機関を使った山旅は、たまたま同じ乗り物に乗合せた他人も、僕たちと同じ旅をする仲間のように感じる事が出来たり、どんな旅をするのだろうかと想像したりする楽しみがあったりするのも醍醐味のひとつ。

9時過ぎにケーブルカーを降り高野山の山頂付近に立つ。ガスも出ていたとはいえ気温もかなり低く、今回の装備で夜に十分に眠る事ができるのかと不安がよぎった。

夜の寒さに不安を懐きながらスタート地点のバス停に着いたのが朝の10時。高野山のケーブルカー付近で前泊をしていれば朝早くからスタート出来リスクも少なくできるが、今回は当日の朝に移動で時間を使う計画だった為、少し遅めのスタートとなった。

この日のウェアーは、ベースレイヤーにウールの半袖Tシャツを着用し、その上に行動中にも微妙な体温コントロールがしやすいようにと化繊のロングスリーブTシャツを重ねた。

歩き始めは少し肌寒かった事もあり、薄手の化繊インサレーションを着用していたが、1時間もすれば太陽が顔を出し気温もグングン上昇した為、化繊のロングスリーブシャツで歩いた。昼を回る頃には、ウールの半袖Tシャツ一枚で快適に行動し続けることができるコンディションとなり、行動中のウェアー選びは自分的にはバッチリだった。

歩き始めてしばらくは、テント泊の事やレイヤリングの不安もあったが気温の上昇と共にその心配もなくなり、ひたすら本日の宿泊予定地(叔母子岳の避難小屋)まで歩く事に集中が出来た。

トレイルも比較的整備されており、途中車道を歩く区間もあったりと道に迷うポイントは少なかった。また、約半日毎に給水ポイントがあり、持ち運ぶ水の量を抑えることもでき、ペースを落とすことなく進めた。

熊野古道特徴として、山を歩いて集落に出て、また、山に入るルートが基本スタイル。また、一般的な山歩きは、麓から山頂へ行きまた麓に降りる。言わば、登って山頂へ行き下ってゴールとなるのだが、今回のルート設定はその逆。スタートの高野山までケーブルカーで標高を上げている為、スタート直後から緩やかな下りを歩き、丁度半分ぐらいの所で、自動販売機やトイレもある集落に出る。正直、山から集落に出た安心感もあるが、いつもの山行とは違い、ここから、叔母子岳の避難小屋まで登った先が本日のゴールとなる為、最後の登りにその安心感が消える。

日が傾きだし少し焦りも感じたが、山の西側斜面を歩くルートのため非常に夕日と山並みが綺麗で、その時ばかりは疲れも焦りも少し癒やされた。

 

当初、計画した時間に叔母子岳の避難小屋に到着。そして、足早に避難小屋前でテントを張り食事をとった。

画像は友人のBIGSKY「WISP」

(画像は友人のBIGSKY「WISP」)

日が落ちた途端風も強くなり気温がグッと冷え込んだ。僕たちは、食事だけテントで摂った後は、避難小屋に文字通り避難するように逃げ込み、そのまま就寝した。

避難小屋をテント泊の予定地としたのはこれが目的。テント泊の可能な装備を持って行動をするがそれはあくまで必要最低限のもの。ロングトレイルを歩く際は、トラブルで目的地にたどり着くのが遅れる場合や、緊急時にその場で夜を明かす事が必要な時もあるた為、寝具やシェルターがあったほうが安全。また、避難小屋や民宿が点在する熊野古道は万が一の事態が起きたとしても、ある程度のリカバリーをする手段も比較的に選びやすいので自分の体力や装備を試すのに向いているのではないでしょうか。

1日目の行動時間は約6時間。歩行距離約25km。

このお話しは、もう少し長くなってしまうので後編に続きます。今しばらくお付き合いください。
投稿者:井戸田

 

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