令和6年 冬のシノギング備忘録

年2回の恒例行事となっておりますシノギング。今シーズンは真冬に開催してみたい。凛とした澄んだ空気の中を凌ぎたい。そんな私の我儘とエゴにより真冬の開催といたしました。過去に開催してきたシノギングから、AXESQUINデザイナーの柳谷氏と低山小道具研究家のモリカツ氏の両名が揃うと「鈴鹿山脈の天候が荒れる」というジンクスがあったのですが、前回開催の春のシノギングが穏やかな天気で終わり、ジンクスが崩れたかと思われました。しかし、今回のシノギングで見事に的中。暖冬で雪が非常に少なかった鈴鹿山脈に、見事に雪を降らせてくれたのです。

 

ほんの1週間前まで雪なんて見当たらなかった、集合場所の福王神社駐車場。この日は見事に積雪10cm以上のベストコンディションとなりました。そして、そんな状況中、今回も三重県だけでなく愛知県や京都からもご参加頂き嬉しい限り。

集合場所で荷物を整えたら、柳谷氏より「凌」と「シノギング」に関してのお話しを伺います。歩き出しそうで、中々歩き出さないのがシノギングなのです。

 

 

お話しの後は、今回のフィールドとなる福王エリアの地図を確認。多くの登山者はこの福王神社駐車場から上に向かって登って鈴鹿山脈を楽しむのですが、我々は敢えて下へと向かいます。メインフィールドとなるのは標高180~200m程度の超低山域です。

 

地図が配られて次に確認すべきは、その使い方。歩き出す前に、モリカツ氏によるコンパスの使い方と読図講座も開催。私自身、プレートコンパスばかりを使っていたのですが、予想以上に球体型のコンパスが使いやすい事に驚きました。早速、当店でも取り扱いを検討したいと思います。

 

先ほども述べましたが、歩き出しそうで中々歩き出さないのがシノギングです。地図読み講座の後はシューズの紐の閉め具合講座も開催。知っているようで知らないシューズの紐の閉め具合。ポイントはシューズの中の空間をしっかりと無くす(足へフィットさせる)こと。また、前提として踵のカップがちゃんと合う靴を選ぶこと。この二点が非常に重要となります。

 

集合から約1時間後、地図で最初の目的地と定めた東海自然歩道の入口へと向かいます。このあたりは、まだ神社参道の一部となっている為、車の通った形跡があり歩きやすくなっています。

 

しかし、少し進めばこの通り。さらに雪が深くなり、車が作った轍もここまで。ここからは、誰も通っていないルートを進んでいくのです。

 

降ったばかりの雪を踏む感触は、何度経験していても凄く気持ちよくて踏みしめた時に鳴る「ギュッ」っという音を聞くと、暖かいながらもまだまだ冬なんだなぁ~…としみじみ感じます。

 

なんて感傷に浸っていたら、ドンドン深くなっていく雪。一列に並んで進んで行きましたが、先頭の新雪を踏みしめる楽しさはご参加頂いた皆様へお譲りしました。(決して後ろを歩いて楽がしたかったわけではありません。汗)

この後、20分程は自然歩道を歩き、そこから道なき道を進む予定でしたが、急な積雪でルートが不明瞭になった事で、途中から進むべき道がハッキリとせず。

 

そこで急遽開催されたモリカツ氏による整地講座。周囲から得られる情報により現在地を特定し、進むべき方角を導き出します。どうやら予定したルートから少し外れている事が発覚。ここから本来歩きたかった道へ出る為に針葉樹林帯を突っ切りました。

 

雪で覆われた地面には、時折小さな倒木が隠れていて足を取られそうになります。薄く雪が張っている分、簡単に踏み抜けてしまうのでかなりテクニカルな状況。

 

 

そんな状況ではありますが、参加者の皆様の足取りは軽いままに休憩スポットへと到着。

 

早速各自お昼ご飯を…と言いたいところですが、その前に柳谷氏によるハンモック&タープ設営講座のお時間です。シノギングの楽しみの一つであるハンモック。その上手な張り方をレクチャー頂きました。

 

さらにモリカツ氏よる簡単ロープワーク講座も開催。かた結びだけを使って様々な応用が効く超簡単ロープワークは知っておいて絶対損はしません。気になる方はスタッフ松下へお声かけ頂ければレクチャーさせて頂きます。

 

ロープワーク講座が終わり、いよいよ休憩か…と思いきや、休憩しそうで中々しないのもシノギング。続いてはネイチャーストーブへの着火講座。マッチ一本で確実着火させる為のテクニックを学ばせて頂きました。モリカツ氏の様々なレクチャー内容の凄いトコロが全て科学的な根拠に基づいて説明されているところ。故に一つ一つの講座内容がちゃんと腑に落ちるんです。

一通りの講座が終了したところで、ハンモックタイムでございます。

 

 

 

 

 

 

自分で決めた場所で、自分で背負ってきた道具と食材を調理して食べる。山では色々な事が自分で決められます。その分、自由度が非常に高いのですが裏を返せば全てが自己責任ということ。特にシノギングでは、その配分が色濃いのではないかと思います。登山道を外れ、地図を読み解きながらどこを歩くのか、どこまで行くのか。その全てが自分次第。自分の力量を知っていなければ出来ない遊びですが、知れば知る程この遊びの奥深さにハマっていくんです。

 

お腹も満たされて下山開始…とその前にモリカツ氏によるパッキング講座が開催。より効率的に担ぐ為に重量配分や、背負った時に格好良く見えるパッキングの仕方等、モリカツ氏のパッキング美学も交えながら教えて頂きました。

 

出発前に忘れてはいけない。笑ってはいけない記念撮影。ご存知では無い方も多いとは思いますので、ご説明させて頂くとシノギングとは真面目に凌いでいるので笑顔の記念撮影なんて野暮な事はしません。真面目な顔で写るのです。

 

 

下り基調だった往路とは違い、登り基調となる復路。さらに往路で歩いた道とは異なるルートで駐車場までの帰りを試みます。

 

登りばかりかと思っていたら、途中の要所要所で現れる急な下り道。しかも雪と柔らかい土の地面のミックスコンディションで非常に滑りやすい。しっかりとシューズでエッジを効かせて下っていきます。

 

途中には沼地の上に雪が張ったトラップの様な場所も。私は見事にこの罠にハマり、膝まで泥に浸かりました。「うわぁ…もう膝下ベタベタだ…。」と思っていたのですが予想以上にクナイが防いでくれていて大きな被害はありませんでした。

この後、地図上ではそれ程大きな谷に見えない場所を通ろうとしたのですが、実際に現場へ着くとロープが必要な程、急な沢地形となっており、その道は断念。途中から往路で来たルートへエスケープして駐車場へと向かいました。

 

予定より約1時間遅れの帰還となりましたが、色々な講座も含めて内容盛り沢山な一日となり、ご参加頂いた皆様からも満足のお声を頂き嬉しい限り。今回のイベントをきっかけに自分なりのシノギングに向き合って頂ければ幸いです。

 

今回、柳谷氏より凌とシノギングに関してのお話しをお伺いした際、ハッとする一言がございました。それは「凌は美学」という言葉。

この言葉の意味は、ただ単純に地図を片手に山を歩くのではなく、自分なりの美学を持ち探求して欲しい。その一つとして、歩く様の「所作」にも意識をし、美しく歩いて欲しい。そういった気持ちが込められています。

この考え方は、剣道や弓道、柔道や華道、茶道等にも共通する事であり、日本特有の感性でもあると思いました。日本の低山を、日本の文化の視点から探求していくのがシノギングであり、その体を現しているのが凌のアイテム達なのです。まだまだ凌の世界の奥深さには追い付けていませんが、今回のシノギングを通してまた一つ新しい扉が開いた気がします。

今後もシノギングは定期的に開催していきますので、ご興味のある方は是非。

本日のブログは松下がお届けいたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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