災害時にも役立つアウトドアギア~火の確保の話~

前回の私のブログに続き、今回は災害時の火の確保について書かせて頂きます。
もしもの時に断絶される可能性があるライフラインは水道、電気、ガス、通信の4つ。そのうち電気とガスは熱エネルギーの発生には欠かせないものになります。食べ物を調理したり、お風呂のお湯を沸かしたりと、非常に重要な役割を担っている部分。災害時に電気やガスが絶たれた場合、必要な熱エネルギーを自分達で確保する必要があります。今、ご自身の持っている物から熱エネルギーの発生源である「火」または「炎」を発生させるにはどうしたらよいでしょうか。

アウトドア遊びをされている方であれば多くの方が既に何かしらの火器をお持ちだと思います。

恐らく、最も所有率が高いのがガスストーブ。取り扱いが簡単で、火力調整も容易に行えるのがポイント。他にもアルコールストーブや固形燃料等、「山へ持って行く物」がもしもの時には非常に役に立ちます。

ただ、ここで一つ注意点があります。そのガスストーブに火を付けるのは何を使いますか?

 

メーカーやモデルによりますが、ガスストーブ本体にはイグナイターと呼ばれる着火装置が付いています。スイッチを押す事で小さな火花を発生させてガスへ着火する為の機能です。家庭用ガスコンロ等で火を付けた際に「カチッ」と音がしたり「チチチチ」と鳴っているアレです。

もしもの時だけでなく、山でも起こり得る事なのですが、このイグナイターが壊れていたらどうしますか?他の熱源で着火をするしか方法はありません。大切なのは、この次の着火道具を用意しているかどうかです。

 


【左からマッチ、ライター、ファイヤーストライカー】

ガスストーブを使おうとしても、着火が出来なければ全く持って意味がありません。そのため、着火のシステムは3段構えで考えておく必要があります。イグナイターが付いているガスストーブであれば、それが一つ目。そしてイグナイターが壊れてしまった時の為にマッチorライター。用意していたマッチやライターが水に濡れてしまって使えない時の最終手段としてファイヤーストライカーで完璧です。

 

ファイヤーストライカーは非常に原始的な手法で火花を発生させます。ロッドと呼ばれるマグネシウムやフェロセリウム(鉄とセリウムの合金)の棒を、ストライカーと呼ばれる角が立ったもので擦ることで火花を散らします。複雑な機構は備わっておらず、使い方は非常にシンプル。故に壊れる事がまずありません。起こり得る事としては安いストライカーはロッドが非常に細いので使い方を誤ると根本からポキっと折れてしまう事があります。

 

ストライカーを擦る位置は先端の2cm程度で十分。このあたりから力を入れてゴリっと擦ればガスストーブやアルコールストーブの着火に必要な火花を発生させる事ができます。

 

軽量で携帯に便利なファイヤーストライカーやファイヤースターターもあります。EXOTACから出ているアイテム達は軽量コンパクトな物が多いので山のエマージェンシーキットに忍ばせておいたり、普段持ち歩く鍵のキーリングに取り付ける事が出来る優れもの。

ガスやアルコール燃料が無くても状況によっては、木の枝や木材等に着火して火を確保しなければいけません。そういった際に、着火道具の有り無しで必要な労力が大きく変わります。

 

また、木を燃料にしようとすると着火から火の育て方までを知っていなくてはいけません。写真は左から順番に着火しやすい物を並べました。一番左は麻紐をほぐした物で簡単に火は着くけれど、あっという間に燃え尽きてしまいます。麻紐が燃え尽きる前に右隣の燃料に火を移し、それが燃え尽きる前に右の燃料へ…と言った具合に小さな物から大きな物へと火を移して大きな炎へと育てていきます。

いやいや、日常的に麻紐なんて携帯していないよ….となるところですが、日常生活のもしもの時であればティッシュで代用しても構いませんし、コットンのハンカチや手ぬぐい等をほぐしてもフワフワの着火剤を作る事ができます。普段持ち歩いている物の中にそういった使い方が出来る物があるか一度確認してみてください。

 

そして、もう一つの大事なポイントが日常的にアウトドアギアを使って楽しむこと。楽しんで使っていれば、自ずと使い方が上手くなりますし、火を付けたり育てるのも上手くなっていくので知らず知らずのうちに災害に強い自分になっていきます。

 

お家に余りがちな残り少しのガス缶も、災害時なら「あって良かった!」というアイテムに変わります。山に持って行くのには中途半端な量で心配だし、かと言って新しいガス缶と併せて2個持っていくのも無駄に重量が増えてしまう…。そんな理由で家で眠っている半端なガス缶も、必要になる時が来るかもしれないので、幾つかはストックしておいても良いと思います。

 

もしもの時の為に色々と練習しておくのも大事ですが、アウトドア遊びの延長線上で楽しみながらマスター出来れば時間も有効的に活用出来ます。外で焚き火をしている時、ガスストーブを使っている時等…そういった時に、災害時にこの道具はどのように役立つだろうか、今行っている作業でもしもの時に活かせる技術は何かあるだろうか…と頭の片隅で考えながら楽しんでもらうと色々な発見や気付きが得られますよ。ただ単純に外遊びをエンジョイするのではなく、一石二鳥の遊び方で楽しんでみては如何でしょうか。

本日のブログは松下がお届けいたしました。

 

 

 

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