冬の行動着として特化させるならpatagonia Thermal Airshed Jacket

先日の火曜日は、moderateスタッフ松下と姉妹店のスノーボードショップA-BONYスタッフの伊藤と、そして、A-BONYの二十歳のお客様2名の合計4名で一緒にゲレンデライド楽しんだ。

A-BONYチームと合流するまでは、松下とゲレンデの地形やコンディションをチェックしながらのんびりとライディングを楽しみ、午後からは20代のA-BONYチームと合流しボゴボゴに荒れたゲレンデを、「若者に負けるか!」的な意気込みで滑りたおした。

若者をプッシュしたのか逆にプッシュされたのか分からないが、結果的に脚を攣りながらコンドラが終了するまでしっかりスノーボードを楽しんだ。

その翌日―。

moderateスタッフ全員で藤原岳をハイク。

前日、寝不足状態でゲレンデを滑り倒した僕は、その晩、泥のように寝てしまい集合時間の10分前に起床するという寝坊をキメこむ。勿論、目を覚ましてその事実に気がついたっ僕は、寝ぼけている暇なく、目に入った道具を慌ててアレやコレやと車に放り込み皆と合流する。車を運転しながら放り込んだ道具を思い出し、現地の駐車場でテストしたい道具や食べたい食材を選定しザックをパンパンにする。予想以上に重たくなったザックは、前日のスノーボードで張りの出ている脚を更にパンパンにしていった。確実に、疲れた身体にムチを打っている。でも、この感じ嫌いではない。

僕にとっての雪山登山と言えば、滑る為に登ることが多いだけに、滑らない雪山のハイクはある意味新鮮で楽しく、それが、疲労をかき消す。

と、色々あって書きたいことも沢山あるけれど、おそらく、この藤原岳のフィールドレポートは誰かが書くだろうから(笑)、僕からはこれぐらいにしておいて・・・。

僕は、その藤原岳でテストしたかったpatagoniaのThermal Airshed Jacketについて書かせて頂きます。

 


「アクティブインサレーション」とは?

ここ数シーズンmoderateではこのアクティブインサレーションという言葉をキーワードに、多くのお客様に冬の寒い時用の行動着をご紹介させて頂いています。

そのアクティブインサレーションも定義が少し難しいですが、個人的には今回ご紹介させて頂くpatagoniaのThermal Airshed Jacketもその類になると思うので、先ずは「アクティブインサレーションとはなにか!」をご説明させて頂きます。

アクティブインサレーションと横文字で聞くと「?!」と思われる方もいらっしゃると思いますが、日本語訳としてTeton Bros.がよく使う「動的保温」という言葉に置き換えると非常にイメージしやすいのではないでしょうか。

一般的なダウンや綿製品は、寒い環境下で動かない時や極めて運動量が少ない時に体温を維持する為に着る目的モノが多く、それを「静的保温」と表現するのであれば、その寒い環境下で、ある程度運動を行ないながらもオーバーヒート起こしにくい状態で体温を維持する事を目的としたモノが「動的保温」とされています。

よって、冬の寒い環境下で運動量の少ない状態、または、停滞時にそのアクティブインサレーションと言われるアイテムを着用していると、正直、そこまで温かくありません。逆に、寒い日にアクティブインサレーションを着て行動すれば全く熱くならない(オーバーヒートを起こさない)のか?!と言われればそうではありません。あくまでも、オーバーヒートしにくいだけであって、ベースレイヤーや運動量や日射や風等、それらの条件によってはオーバーヒートする場合も勿論あります。

なので、最近僕の中でアクティブインサレーションを表現する時に「ポカポカと温かい感じを作るのが得意なアイテム」と表現する場合があります。もう少し違う言い方をすると、「5月上旬から中旬の陽気」を身に纏う的な感じと表現する事も・・・。(余計に分かりにくいかも・・・)

そのアイテムを区別する判断基準のヒトツに、ウェア―の中綿に使われている素材が、動的保温素材なのか静的保温素材なのかで分けれる事があります。

代表的な所でいえば。

《動的保温アイテムの中綿素材と言えば》
・ポーラテックアルファ
・オクタ
・VIVO

《静的保温アイテムの中綿素材と言えば》
・ダウン
・PRIMALOFTゴールド、シルバー
・コアロフト

ここまで聞くと、インサレーションとして動的保温のアイテムは非常に優秀に感じるかもしれませんが、あくまでも、着続ける事が目的とされているモノが多く、静的保温系のアイテムに比べると重量的に重く、また、圧縮率も悪い為、コンパクトにして持ち運ぶ事に関して言えば、お世辞にも良いとは言えません。

もし、その両方の特徴を兼ね備えたハイブリットのようなモノがあるとするのであれば、それに非常に近いのが、今回ご紹介するpatagoniaのThermal Airshed Jacketなのではないでしょうか。

 


静的保温の軽量中綿をメチャクチャ通気性の高い生地で包みました。

Thermal Airshed Jacketに使用されている中綿素材は、同ブランドで発売されているMicro Puffシリーズに使われているプルマフィルを使用。

プルマフィルは、ダウンの構造を模倣する連続した化繊のインサレーション素材で、ダウンのように温かくコンパクトに収納が出来、たとえ濡れても保温性を維持する特徴があります。そのプルマフィルの綿を、マイクロパフのような高密度ナイロンで包むのではなく、通気性に優れたエアシェッドの生地で包んだのがThermal Airshed Jacket。

これにより、アクティブインサレーション系のアイテムの中では軽め部類に入り、また、圧縮率の高さによりコンパクト性も実現。更に、通気性の高い生地のお陰でオーバーヒートも起こしにくいとうハイブリットなアイテムに仕上がっています。


(シューズはALTRAのオリンパス9.5インチとなります)

 


熱の排出を考えて、背中と袖下は綿は不使用しつつも・・・・!!

通気性の高い素材だけに頼るのではなく、物理的に熱が溜まりやすい「背中」と「腕下」からプルマフィル(綿)を完全無くす事で、オーバーヒートがしにくい環境を作り出しています。


(写真の濃い青色の部分は綿が入っていません)

ただその綿を抜いてある部分、例えば腰回りや手首回りは冷やしてしまうと、逆に冷えすぎえしまうというウィークポイントでもあり、Thermal Airshed Jacketは、そのポイントとなる部分のみ速乾性のあるワープニット素材を使用し、裾の背中側と袖口に伸縮性を持たせながら運動中に温かさが無駄に出ていかないようにを封じ込めるようなデザインがなされています。


(裾のグレー色の部分がワープニット素材になります)

 


ハンドポケットは排除されていますが、便利な内ポケットが2つあります。

この手のジャケットは、通常であればフロントの腰辺りに左右夫々ハンドポケットがありまがThermal Airshed Jacketはそれらを排除しています。正直、最初そこのポケットが無い事が不便に感じましたが、実は、ジャケットの内側にドロップイン型のポケットとジッパー付きのポケットが左右についています。


(パッカブルとしても使えるジッパー式ポケット)


(深めのドロップインポケット)

一般的なハンドポケットのように、手をポケットに入れて温める事は出来ませんが、身体の近い所にポケットがある為、外したグローブやネックウォーマーや携帯電話等を入れて体温で温めておく事が出来ます。

 


気温5℃~0℃の藤原岳で使用して。

まだ、現場で使えたのは1度だけです。しかも、無風の快晴という好条件過ぎる環境での使用の為、あまり参考にならないかもしれませんが・・・。

【日にち】 2021年1月13日(水)
【場所】 藤原岳
【天候】晴れ(ほぼ風なし)
【気温】ベースで5度 / 山頂付近で0度
【その他】4合目あたりから凍結/5合目から積雪

【レイヤリング】
ベースレイヤートップス: Teton Bros. / MOB CREW(
ミッドレイヤー: patagonia / Thermal Airshed Jacket(
バックアップインサレーション: ARC’TERYX / 旧Nuclei FL Jacket(
ハードシェル: ARC’TERYX / 廃盤モデルのアイテム
パンツ(タイツ):point6 / Mid-Weight Bottoms(
パンツ:Teton Bros. / Serac Pant(

 

個人の感想として

車を降りてから山頂までThermal Airshed Jacketを一度も脱ぐことなく行動をする。正直、途中熱かったが、フロントのジッパーの開け締めと手首を少し出すだけで温度調整を対応出来た。正直、Thermal Airshed Jacketを脱ぐ事も考えたが、脱いだ後に風に吹かれて身体が冷えて(お腹を壊して)しまうよりも「ポカポカと温かい感じ」を常に作り出しておきたく、一時的な熱さは少し我慢をした。その結果、「常に温かい~少し暑い」ぐらいをキープし身体は非常に動きやすく「寒い」と感じる事は全く無かった。

もし、レイヤリングを見直すのであれば、今回の環境下であれば、ベースレイヤーのMOB WOOLをもう少し薄いのにしても良かったかなと思ったが、それも登りの途中まで。そこから先、山小屋での昼食中や山頂付近での雪遊び中は濡れ冷えも感じる事なく、適度に感じた。(この時は、Nuclei FL Jacketを羽織っていた)

総評として、1回目テストの印象は非常によく、Thermal Airshed Jacketの持つだいたいの保温力がわかった為、2回目以降はベースレイヤーの選択がよりしやすくなった。あとは、今回は風の影響が殆ど無かった為、今度はそのような環境でテスト出来ればと思う。

そして、最大の特徴でもある、背中と腕下の綿が無い状況は、寒い時の行動着としては非常に優秀!街でも山でも使えるインサレーションジャケットをお探しの方には少し不向きだと思いますが、「冬の行動着として特化したアイテム」をお探しであれば、間違いなくThermal Airshed Jacketはおススメです。

あと、Teton Bros. / Serac Pant()は、やっぱり最高でしたね!

投稿者:飯田

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