昨年の10月、長野県の白馬村でノースフェイスのフライトディーラーズMTG■が開催されました。
全国のノースフェイス取り扱い店の中でもトレランに強いお店のスタッフが一堂に会するMTG。その時に行われたフィールドテストで試させて頂いたのがノースフェイスの新たなソールユニットテクノロジー「VECTIV」を搭載したトレランシューズ。
そもそも「VECTIVって何?」というところから始まりますが、言葉で説明すると非常に長くなってしまうので、まずは下の動画をご覧下さい。
立体的に成型されたプレートを軸にシューズが形造られていきます。ヒールやトウの周囲に設けられたプレートの立ち上がりが重要なポイントで、着地時に生じる前後左右の微細なブレを防ぐ機能を備えています。この構造こそがVECTIVの一番の特徴。
走行中の安定性を犠牲にする事無く、より速く、より長い距離を走り抜ける。その為に開発されたのがソールユニットテクノロジー「VECTIV」なのです。そして、トップアスリートからファンランナーまで多くの方にVECTIVを履いていただけるよう3モデルが登場しています。
THE NORTH FACE Flight VECTIVE ■
元々は、ウルトラトレイルで表彰台を狙うトップアスリートの為に開発されたモデルで、VECTIVシリーズの中で最上位機種となります。でも、ご注意を。「トップアスリート」しか履いていけない、履きこなせないシューズではありません。私がフィールドテストさせて頂いたのもこのモデルで、純粋に感じたのが「登りも下りもガンガン進める。」というところ。走った後にシューズの構造をまじまじと見ると、その履き心地に納得出来ました。
つま先が上がったロッカー構造で前後のドロップは6mm。シューズがグルっと回転して前に進ませてくれるのですが、着地の仕方がポイント。ミッド又はフォアフットでの着地がこのシューズとの相性が良く、故に自然とフォアフット着地になる登りでもグイグイ登れてしまうんです。ロッカー構造に加えて2層構造のEVAミッドソールの反発力もあるのですが、そこに加えてもう一つ。
「VECTIV」の印字がされた3Dプレート。この素材に秘密があり、実はカーボンなのです。ロードシューズ界では当たり前になってきているカーボンプレート。それをトレイルシューズに搭載し、さらに3D構造にまでしたのは世界初。
踵側だけでなく、つま先側にもプレートがせり上がっています。これにより着地時の横方向へのブレを抑え、エネルギーをロスすること無く進行方向へと向ける事が出来るのです。カーボンが搭載されているからと言ってシューズ自体がカチカチに固いわけではありません。むしろ足を入れた瞬間は「本当にカーボン入ってるの?」と思ってしまう程、違和感の無い穿き心地。
※写真はプロトタイプの為、カラーが異なります。
しかし、いざ走り出してみると違いが分かります。足の踏み込むエネルギーを進行方向へとしっかり伝えてくれるので、普段なら歩いてしまいそうな登りも勢いを保ったまま登れてしまうんです。
耐久性に関しては、擦れやすい横面に高強度ケブラー糸を使用したMatryx®メッシュパネルを採用する事で通気性と耐摩耗性を両立させています。ケブラーに対して固いイメージがあったのですが、足を入れた際にゴワつきを感じる事もありません。
アッパーの前側はニット素材になっているので足当たり滑らかで屈曲時に当たるポイントも見当たりません。
シュータンは本体と組み合わさった一体型構造で足の動きにしっかりと追従してくれます。生地パーツがシューズの中で重ならないので変な違和感が生まれたり、ピンポイントで甲が擦れてしまうリスクを減らせます。
アウトソールはラバーの配合をイチから見直して、新しく開発されたSurfaceCTRL™アウトソールが使用されています。そして、このソールがグリップ力抜群なんです。コンクリートの上で履くと5.10が採用していたステルスソールの様な粘着性を感じる程。グリップが良い分、減りも早いんでしょ…と思ってしまうところですがノースフェイスの契約アスリートによる実走テストでは、走破距離が500kmに達してもなお、理想的なクオリティを保っていたと実証されているぐらい耐摩耗性にも優れているんです。グリップが効くので下りでもスピードコントロールがしやすく、ついつい攻めた走りをしてしまいます。今よりもさらに一歩踏み込んだ新しい走りを感じられるのがFlight VECTIVなのです。
と、ここまではFlight VECTIVの良いトコロをご紹介させて頂きましたが、少しだけ個人的な意見を述べさせて頂きます。まず、Flight VECTIVは「万人に向いているシューズ」ではありません。履いた感覚では足幅が極端に細い方はシューズの中で足がブレてしまう事があります。正しいフィットで履けていないとVECTIVプレートが上手く機能してくれないだけでなく、捻挫等のリスクが生まれる事も。幅が狭めの方は、取り扱い店舗で一度ご試着頂く事をおススメします。また、ある程度の脚力や走力が備わった方で無いとシューズの良さを感じて頂けない事もあります。この部分に関しては、後ほどご紹介させて頂く2モデルを履いて頂き、納得頂けるタイプをお選び頂ければと思います。
「新登場のシューズだから良い。」、「最新の技術が使われているから良い。」では無く、ご自身の走り方や楽しみ方、スタイルにフィットするモデルをお選び頂ければ幸いです。それでは、次のモデルをご紹介!
THE NORTH FACE VECTIV Infiniti ■
3Dプレートやロッカー構造のEVAミッドソールにアウトソール、前後のオフセットは6mmと基本的な構造はFlight VECTIVと同様ですが、トレーニングシーンからレースシーンまで幅広い使い方が出来るように設計されているのが特徴なモデル。
まず見た目ですぐに分かるのがアッパー素材。Flight VECTIVでは側面にのみ配されていた高強度ケブラー糸を使用したMatryx®メッシュパネルをシューズのアッパー全面に採用。アルプスの様な岩稜帯でも臆する事無く走り抜ける事が出来ます。
搭載されているVECTIVプレートはカーボンでは無く、気温により硬度変化しないPebax®樹脂を用いています。カーボン程の軽さはありませんが、3D構造による安定感は健在。履き口はシューズ自体とシュータン共にフィット感の高い薄めの仕様。足に対してのフィット感も良く、踵のホールド感も申し分ありません。
ロングレースは勿論の事、アルプス級の山々をファストパッキングする時にも活躍してくれる万能型のシューズと言えます。ハードに使いたい方におススメです。
THE NORTH FACE VECTIV Enduris ■
先にご紹介した2足が「攻め」のシューズであるならば、こちらは「守り」のシューズと言ったところ。VECTIVの安定感や推進力はそのままに癖を極力少なくした穿き心地が特徴で、初めてロングディスタンスのレースにチャレンジする方の完走を後押ししてくれます。
履き口やタンはボリュームがあり、肌に触れた際にクッション感を感じるタイプ。ロードシューズやトレランシューズの多くに採用されている形状なので、穿き替えた際に違和感が少ないのもポイント。
アッパー素材は、通気性の高いエアメッシュを採用。肌当たりが柔らかく、摩耗が生じやすい場所には補強が施されているので長距離、長時間の使用にしっかり耐えてくれます。
履いた感覚では、今回の3モデルの中では最もトレッキングシューズに近い印象。「長時間走り続ける」というよりも、ところどころノンビリ歩いたりしなが長い距離を移動する。そんなスタイルに合いそうな履き心地。トレランだけでなくハイクでも活躍してくれそうなので、両方で使いたい方にもおススメです。
VECTIVを搭載した3モデル。それぞれ特徴的なシューズ達ばかりなので、気になる方は是非今週末に店頭で履いてみて下さい。3足比べて頂き、お好みのタイプを見つけて頂ければと思います。今までの走り感とは異なる感覚を感じてみて下さい。
本日のブログは松下がお届けしました。