今回のBLOGは、2022年1月24日(月)に遊びに行った「藤原岳」のお話し。
AM 5:45
かじかむ手をヘッドライトで照らし神武神社の駐車場でパッキングの最終チェックを行いながら、一度は答えを出した、風速13メートルの予報に対してレイヤリングに少々の不安をいだきつつ出発の時を待つ。
昨晩四日市で降った冷たい雨は、山の麓からうっすらと積雪しているのではと期待をしたが、降っていたのは雪ではなく雨だった事が逆に色々な不安を煽る。深夜の冷え込みでアイシーなサーフェイスが多いのではないのかと。
通常の山行ではトレランシューズを履き、また、雪山となれば滑る事が目的で登ることが多いためスノーボードブーツで雪山を歩く自分にとって、普段履く機会が少ない「THE 登山靴」を履いてコツコツと駐車場を歩く自分の姿が何処か新鮮だ。さらには、あまり一緒に登る機会が少ない貴重なメンバーという事も加わり、ワクワクと期待と寒さの中、雪の藤原岳を登り始めた。
AM 6:57
ヘッドライトで行く先を照らしながらゆっくりと登山道を進む。
出発から約1時間後の6時57分が今日の日の出時刻。
とは言え、木々の隙間から見上げる空は薄い灰色の雲で覆われ、実際に太陽の温かさを感じられるのがいつになるのかと思いながら足を進めた。
西の地平線が朱色になっていく頃、僕たちの足元は泥と雪が凍りついた登山道となり、アイゼンを足に履かせ、地面にザックリ刺さる感覚に安心感を覚えた。そして、あたりがヘッドライト無しでも見渡せる頃になると、アイゼンが刺さる感触と共に、脛から膝下程まで埋まる雪道を楽しみつつ、それを引き抜く毎に体温が上がって行く事を実感する。
さっきまで少し寒かった風も空気も、今は自分たち都合で丁度気持ち良いと、その冷たさを受け入れていた。
ヒップソリの迷路
雪山の魅力は、良くも悪くも縦横無尽に山を歩けるという事。
降り積もった雪の上には、多くの人が歩いて出来た踏み跡の雪道があり、そして、それをショートカットするかのようにヒップソリをしたトレースが沢山出没する。結果的には、どのラインを歩いても大きく道を外す事はないが、時にヒップソリのルートが急登となり辛い思いもするが、それもまた時に楽しいと思わせるのが雪山の魅力ヒトツなのかもしれない。
唸る風と山小屋
そうこうしているうちに、見上げる雪道の先に空が近づいてきた。
山頂直下の山小屋までもう少し。
その頃になると、天気予報で表示されていた風速13メートルを思わせる風の唸り声が聞こえてくる。今立っている場所では、実際にその風の強さを実感出来るわけではないが、それに耐えうる装備は持ってきている。
な風を避けるように小屋付近まで進み、その風に叩かれる前に僕たちは小屋に飛び込んだ。
風が遮られた小屋の中は暖かく感じるが、それも一瞬のこと。椅子に腰掛けた僕たちは、自分からの運動熱がなくなり手足の先から身体を冷やされていく。
「コーンスープ」「ココア」「白湯」
休憩時間の合間に、温かいものを身体に流し込み内側から冷えに対抗するものの、その効果は一瞬で消される。
時折、窓ガラスを大きく叩く程の風が吹き付ける度に、この後の行動を悩ませる。この冷えた身体でこの風の中を歩き山頂まで行くべきかどうかと。
僕たちは、冷えてくる身体に対して少しでも暖がとれればと、贅沢にもバーナーでお湯を沸かし続け、その湯気で手先を温めた。
そんな事をしているうちに、小屋の外が穏やかになり優しい日差しが照らされている事に気がつく。
360度の景観から見えたもの。
小屋の中に広げた荷物を片付け外に出てみると、さっきまでとは全く違う世界がそこにはあった。
確かに少し肌寒いけど、風が穏やかになった事で日差しの温かさを感じる事ができ、僕たちは山頂を目指す事を決めアイゼンやスノーシューを履いて旧ゲレンデだった斜面を歩いた。
山頂では、遠くに見える御嶽山や乗鞍岳を眺め、そして、方角を変えては、目の前に広がる白くなった竜ヶ岳などの鈴鹿の山々を見て、360度の景色を堪能した。風で流される雲の影響で景色の表情が一瞬で変わるの為、景色が変わる度に、「今めちゃくちゃカッコイイイ!」と、興奮気味に僕はスマートフォンシャッターを押し続けた。
ただ、いつも思うのが、今この目で見ている景色と興奮を撮影しても、スマートフォンには全てを記録する事は出来ないし、今、撮影した写真を通じてその凄さを伝えるのには、いくらカメラの性能がアップされても実際には無理なんだろうなと。だから、人はもう一度あの景色と興奮を味わいたくて山に登るのだろうかと。
「山の魅力を一言でいうならば。」
今日一緒に山を登った仲間からこんな話が出された。
もしかすると、今までにも考えた事はあったと思うが、改めて考えると選ぶ言葉に迷ってしまう。
シンプルに「楽しいから」というのが答えなのかもしれないけど、そうじゃなく少し深い言葉を選ぶとするのであればと、僕は「生かされている事の確認。」とその時は言ったけど、本当にそうなのか・・・。
自分の中では間違いではないと思っているけど、その答えに少しスッキリしない。
季節によっても魅力は違う。
単独での山行もあれば複数人の山行でも魅力は違う。
日帰りと一言で括っても遊び方によって違ってくるのに、泊まりとならば魅力だらけで、それだけでも纏める一言が見つからない。
今日の雪山ハイクを通じて、僕は改めて「山の魅力ってなんだろう?」と考えた。
今日みたいな「THE DAY」の日もあれば、辛くて心が折れた時もある。
でも、どっちか良くて、どっちが悪いわけではなくて、そのどれもが魅力を作り上げるファクターである事は間違いない事だけは理解している。
なんとなくだけど、いつか自分にとっての「魅力」が見つかれば良いかなと。今は、これが一番近い答えなのかもしれないと思いながら、これからも山で遊ぶのだと思う。
皆さん、「山の魅力を一言伝えるなら」どんな言葉になりますか。
投稿者:飯田