少し前になりますが、三重県亀山市は鬼ヶ牙にて。秋のコラボMARSを開催させていただきました。

雲一つ無い超晴天!きっと、ご参加頂いた皆様の日々の行いの賜物でしょう。夏のコラボMARSでは鈴鹿山脈で沢登り(詳しくはコチラ■)を開催させて頂いたのですが、今回のコラボMARSはアカデミックな内容となっております。
「フィールドで学ぶ もしもの時の実践学」と称しまして、もしもパーティーの一人が滑落してしまったら…という様なフィールドで起こりうる事故への対応方法を学びます。

数名一組のグループに分かれて、まずは簡単なロープワークから。

参加頂いている方の山遊びスタイルは人それぞれなので、ハイカー、クライマー、沢や等々。勿論、ロープワークへの知識もそれぞれ違うので、ガイドの新名氏からのレクチャーと共にお互いに教え合う環境の中で進んでいきます。


一般登山道を歩いていると中々着ける事が無いハーネスですが、アルプスの岩場を歩いたりする時に、装着しているか、していないかでは安全度だけでなく事故が発生してからのレスキューにかかる時間にも影響が及びます。

集合場所付近での簡単なレクチャーが終わったら、いざ山の中へ。とは言っても、ガツガツ山中へ入っていくわけではありません。

途中の川原で一度集まり、ここから実践学的な講習の本番です。それぞれのパーティーへはガイドの新名氏から下記の様な課題が出されました。
●ケース1
8月下旬の穂高大キレット PM1:00 天気曇り 3名で行動 携帯電波あり
①縦走中、パートナーが10m滑落。負傷。
条件、気温日中10℃、夜間0℃。鎖場のため、アンカーあり。
②ビバークしたものの、ガスでヘリが飛ばない。
条件、
●ケース2
9月下旬の伊藤新道 AM9:00 天気曇り 3名で行動 携帯電波なし
①伊藤新道通過中、上流が大雨か噴気の為、急な増水。
条件、気温5℃。20mロープ、簡易ハーネスあり。
②無事安全圏に降りるも、
条件、ツエルト、バーナーあり。
このケースを目にした瞬間、情けない話ですが一瞬頭の中が「?」になりました。正直、今まで山岳事故に遭遇した事の無い自分にとっては、未知の世界。瞬時にベストな答えが出てきません。
それと同時に湧いてくるのが、自身の無知への恐怖。今まで運良く安全に登山をしてこれたけれど、そのどこかで、事故が発生していたら自分はベストな判断と行動を取れていたのだろうか。答えは「否」です。下手したら、事故に遭遇して一緒に登っていた仲間の命を救えなかったかもしれない。外遊びはオウンリスク。その考えは理解していたものの、実際に現場で迅速かつ的確に判断し行動を出来るかと言ったら、現時点の自分では正直不可能です。
「大丈夫でしょう。」
この慢心が最も危ない思考回路であり、あらゆるパターンを想定しておかなければ命が脅かされる。それが外遊びなのだと実感しました。


実際に、装備品を用いてそれぞれのチームが対応策を練ります。



男性と女性では体重も力も異なります。力の弱い人が重たい人を引き上げるにはどうしたら良いのか。チームで話し合い、考え、答えを導き出します。

勿論、ガイドの新名氏によるアドバイスが要所要所で入ります。大事なのは、直ぐに答えを知ろうとするのでは無く、自ら考え、その考えを仲間と共有する事です。山の中では携帯の電波が入らないところも多々あります。その状況下で最適解をネットで調べたりAIに聞く事は出来ません。自ら考えるしかないのです。学校で学ぶ事と一緒で、一方的に教えてもらった知識は、時が経てば殆ど忘れてしまいますが、自ら考えに考えて導き出した事は意外と忘れず覚えているものです。

今回、学んで頂いた内容も断片的に覚えている事もあれば、部分的に忘れてしまう事もあると思います。その為、学んで頂いた後も非常に大切です。時々で良いので、ロープワークを学び直してみると忘れてしまっている部分に気が付いて自身で調べて学び直そうと思いますし、そういった考えを持ち続けていれば山での事故に対しての意識も高いまま維持できるので、もしもの時に救える命があるかもしれません。
今回、STAICBLOOM様とガイドの新名氏のご協力のもと、開催させて頂きました「フィールドで学ぶ もしもの時の実践学」ですが、開催のキッカケは自分達が日々行っている情報発信でした。振り返ってみると製品の魅力やフィールド遊びの楽しさをお伝えし続けて来てはいましたが、外遊びの危険性に関しては殆ど発信してきていませんでした。
昨今のアウトドアブームの中で登山人口やトレラン人口が増えるのは嬉しい限りで、それに比例してアウトドアショップも増えています。その中で、プロショップで働いている自分達がすべき事は何か。外遊びの魅力を伝える事は勿論、その裏側に隠れている危険性と、そこに対しての来応力が如何に重要か。それを伝える事が非常に大切なのではないかと考え、今回のコラボMARSを開催させて頂きました。今後も同様の講習会や勉強会は継続的に行っていきたいと思っていますので、チェック頂ければ幸いです。


イベント最後には、クライミング体験会も合わせて開催。初めてクライミングをされる方も見えて、登山とはまた違うドキドキワクワクの虜になってしまったことでしょう。

山を下りて、もう終わり…と思いきや、最後のワンレッスンがありました。伊藤新道のような渡渉の際に必要なロープテクニック講座です。


ハーネスを持っていない状況下で、ロープを体に固定して如何に安全に渡渉をするか。非常に分かりやすい説明でレクチャー頂き、私も忘れないようにイベント後に何度も結び方を練習しました。
今回のイベントにご参加頂いた皆様、本来であれば安全登山を続けて頂き、学んだ技術をフィールドで使用する機会無く、山を楽しみ続ける事が出来ればベストですが、もしもの事が起きた時には、技術を活かせるよう定期的に反復練習して頂けると幸いです。
次回のコラボMARSは1月に竜ヶ岳にて雪山初心者向けのエントリーイベント、2月に御在所にて雪山経験者向けのバリエーションルートイベントを開催予定です、近々HPやSNSにて詳細をご案内させて頂きますので、引き続きよろしくお願いいたします。
本日のブログは、松下がお届けいたしました。
