しとしと雨が降る中、開催した今年の春のシノギング。天気が良くない中でも沢山の方にお越し頂き嬉しい限り。
普通の登山であれば晴れを望むところですが、凌のアイテムの真髄を感じるには、これぐらいのコンディションが実はベスト。「凌ぐ」をテーマに作られているウェアであるが故に良くないコンディションの時に本領が発揮されます。
シノギングは、集合場所に集まって直ぐには歩き出しません。まずは、AXESQUIN 凌デザイナーの柳谷氏より凌とシノギングについてのお話しがございます。ただ単純に山で遊ぶのではなく、ブランドの事やシノギングの事をしっかりとお伝えさせて頂く為のイベントでもあるのです。
そして、柳谷氏のお話しの後は低山小道具研究家の森勝氏による地図読み講習。難しいテクニックは必要とせず、非常にシンプルで分かりやすい地図読み技術を教えて頂きます。
そして、歩き出しそうで中々歩き出さないのがシノギング。
地図読み講習に続き、シューズの履き方講習会も開催。実は意外と多い「ちゃんと靴が履けていない」という方。シューズと足を一体化させる為にはシューレースをどの様に、どのくらい締めればよいのか…案外お店でもちゃんと教えてくれる所は少ないかもしれません。
学んだ事は即実践!各々でシューズの紐をしっかりと調整して足へフィットさせていきます。シノギングは登山道では無い所を歩くので、いわばバリエーションルートとも言えます。故に斜面を斜めに移動する事も多々ある為、シューズのフィット感が非常に重要なのです。
シノギングでは凌アイテムのレンタルもあります。雨のコンディションで大活躍するツユハラヒ■を全員で装着して、いざ山の中へ。
木々に囲まれている山中に入ると、しとしと降っていた雨もあまり気にならず、湿度はあれど気温は高すぎず低すぎない丁度良い塩梅。
目的地を目指して進む方向をコンパスで確認しながら歩いていきます。
沢へと落とすルートをどこにするか。斜面の状況や生えている木々、どこを歩いて降りていけば安全か、考えながらルートを決めていきます。登山道を歩くのでは無くどこを歩くかを自ら考えて決める。これがシノギングの楽しさの一つなのです。
自己決定自己責任
その道が正解であったかどうかは、進んでみれば分かります。ダメだったら引き返してまた考えれば良いのです。
バシャバシャと小さな沢を渡りながら靴についた泥も落とす。泥と一緒に蛭除け剤も落ちてしまい気が付いたら足元に蛭が沢山登ってきています。周囲からワーキャーと悲鳴が聞こえる中、私はヒル下がりのジョニーを片手に皆の足元へ噴霧を繰り返していました。
沢の形状を基にして、現在位置を再度確認。周囲の地形や植生等、現地で得られる色々な情報を元に自分達がいる場所の仮説を立てていきます。この時は、地図上にある砂防ダムが丁度目視出来たので、それを基に現在地が分かりました。
ここからは斜面をへつって移動していきます。この動きの時に靴がしっかり履けていないとシューズ内で足がズレてしまい難儀してしまいます。
しばらく歩くと出て来た静かな森。ここを本日の休憩スポットとする事に。そして、休憩場所に着いたからいきなり休憩!とならないのもシノギング。
ちゃんと学んで頂く為に、まだまだ講習会が続きます。森勝氏によるパッキング時のウェイトポジション講座に始まり…
超簡単実践的ロープワーク講座。本当に簡単な手順でロープワークが使えちゃう驚きの内容となっています。
学んだ事は即実践!
簡単なロープワークで、教わった直後には誰でも出来てしまうのですが、実はその後が非常に大事。たまに思い出しながら実践しないと数か月後には忘れてしまうので参加者の皆様、是非山へ行くたびに実践してみてください。
続いて柳谷氏によるハンモック&タープ設営講座。ハンモックを張るのに適した木の選び方や乗る時のポイント等を教えて頂きました。
ちなみにこちらのAXESQUIN 凌から登場予定のハンモック「月下美人」。適度な伸縮性で包み込まれるような寝心地は最高でした。6月以降の販売予定となりますので、ご期待ください!
一通り講座が終わり、各々の好きな場所にハンモックを張っていきます。この時には雨も上がり、ノンビリ過ごしやすい天候に落ち着きました。
ハンモックの設営が終わればお昼の時間でございます。今回の休憩時間は約2時間半と長くとっているので、ゆっくりゆっくりとハンモックに揺られながらご飯を楽しめました。
行動時間よりも休憩時間の方が長い事も稀では無いシノギング。ハンモックに揺られている間は、日々時間に追われている事を忘れて、ゆっくりと時間が過ぎるのを感じられます。
のんびりとお昼ご飯を食べ終わる頃、また一つ学びの場が始まります。
森勝氏によるネイチャーストーブの火付け講座。シノギングでは、ノンビリゆったりと調理も楽しむ為に大きな音のしないネイチャーストーブやアルコールストーブの使用を推奨しています。しかし、ネイチャーストーブを持っていっても薪に火が着けられなくては本末転倒。効率的に着火する為には、どの様な考えの基に薪を配置し、どこに着火をするのか。ちゃんと科学的な理論に基づいて学んでいきます。
同時にナイフの使い方講座も開催。森勝氏の説明の凄いトコロが全て理論立っているんです。感覚のお話しでは無く、ちゃんと理由があって故にこうする…という理数学的な方法論になっているので非常に腑に落ちやすい。私自身も今回のシノギングから沢山学ばせて頂きました。
2時間半の休憩時間もあっという間に過ぎてしまい、撤収を済ませたらいつもの笑ってはいけない記念撮影。僕達は真面目に凌いでいるので、シノギングの記念撮影では白い歯は見せません。
そして、帰り道も凌ぎます。ここまでの行程で遭遇したヒルの数が私一人で十数匹。そのうち、確実にパンツの中に入って吸血しているであろう個体が2匹。だってパンツの上から触った感触で付いているのが分かるんですもの…。
帰り道も沢沿いを歩いていると水流に浸食された大きな壁が出現。超低山ながらもこういった自然の造形物とばったり出くわすのがシノギングの面白さの一つ。
明らかに人が積んだであろう石垣も。区画的に石垣で区切られていたので昔々に集落があったのか、棚田になっていたのか…。この後、昭和を感じる空き缶も見つけたりと色々な物を発見しました。
沢沿いから藪藪の中へ。登山道から外れる以上、藪漕ぎは必須。ガサガサと草を揺らしながら歩いている時の気分は熊になりきりましょう。そうすれば厄介な藪も楽しく感じます。
藪を抜けると文明を感じる畑や用水路が出てきました。ここまで来ればゴールの駐車場が近いので安心すると共に、もう終わってしまうのか…と少し寂しくもなる瞬間でもあります。
開けた場所に出れば、目の前は直ぐに道路。今回も楽しく真面目に凌ぐ事が出来ました。大きな怪我や事故もなく終える事が出来て何より…と言いたいところですが、しとしと雨の中を歩いた事によりヒルの襲撃を受け続けた為、下山後のヒルチェックが必須。
皆で揃ってシューズを脱いで、パンツの裾をめくり確認したところ….出るわ出るわの大騒ぎ。私も案の定しっかりと吸血されていました。恐らく、道中を含めて全員が発見したヒルの総数は数十匹になるであろうという数。私も途中で見つけたヒルを何匹か手の平に乗せて愛でていたのですが、そこで一つヒルの生態について気付いた事があります。
それは、「ヒルはツンデレである」という事。
こちらから触りに行くと丸まって頑なに拒否してくるくせに、意識していないとデレてくっついてくる。なんとも厄介な性質を持っています。皆様も山でヒルを見つけたら手の平に乗せてツンツンしてみたり、コネコネしてみてください。普段あれだけくっついてくるのに急に大人しくなりますよ。
話が逸れましたが、今回のシノギングは沢山の生き物とも出会いました。
亀一匹、マムシ一匹、イモリ一匹、アナグマ一匹、カエル数匹、ヒルめっちゃ沢山。
雨の日の登山はリスクもあって避けがちですが、低山でしっかりとリスクヘッジすれば雨天特有の植物の美しさを楽しめたり、タープを張って雨音と聞きながらノンビリしたりと雨の日だけの楽しみを感じる事が出来ます。皆様もヒルと格闘する事になるかもしれませんが、雨の低山を楽しんでみてください。
今回のシノギングにご参加頂いた皆様、ご協力頂きました関係スタッフの皆様、ありがとうございました。また、次回の冬のシノギングもよろしくお願いいたします。
本日のブログは、ヒルへの興味の新たな扉が開いた松下がお届けいたしました。