足から身体をアップデートする。#3「 足裏には、身体を支えるセンサーがある」

 

前回のお話

前回のブログでは、僕がALTRAに出会い「履き手側の意識をアップデートする」という考え方に至った経緯をお話ししました。

ここからは、多くのベアフットシューズの何故あんなにソールが薄いのかをお話します。

 

ミニマムとマキシマムの揺り戻し

 

ALTRAが日本に上陸した14年前。

その当時まで僕は靴のミッドソールという単語も深く理解してなかったし、靴を選ぶのにソールの厚さを機能として選んでいなかった。いや、そもそも、それほどミッドソールの厚さの違いを強く謳った靴が販売されていなかったように記憶している。

因みに、ALTRAが日本に上陸した当時は、比較的ミッドソールが薄いシューズが多く、当時アメリカのランニング業界では薄底シューズが人気だった。その為、多くのブランドがソールの薄いシューズを「ミニマルシューズ」や「ベアフットシューズ」として販売。


(写真:XEROSHOESの旧モデル)

今思えば、この頃は多くのブランドが技術を搭載した機能シューズの販売と同時に、身体本来機能へアプローチしたシューズを販売していたのだった。

 

ただ、時代は大きく変わった。

 

トレイルランニングの世界では、100マイルというロングレースが広く知られるようになり、その頃から厚底シューズのHOKA等が誕生してきた。

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レース市場は、世界中のトレイルランナーが憧れる100マイルレースに出るためには、それなりの戦歴が必要となり、多くの方がロングレースにチャレンジするようになっていった。それに合わせて、トレイルランニング市場はロングレース思考が強くなりはじめ、気がつけば、過酷なロングレースを走り切る為の靴として厚底シューズが多く市場に出回る事になった。

 

同時に、ロードランニングの世界でもハイクッションの高反発系シューズを履く選手が続々と増えた。今ではTVで見るランナーの方も、公園で走るランナー方も多くランナーが厚底になり、あの独特な着地音と共に、飛ぶように走るランナーを見ない日は無いぐらいになった。

 

 

ようするに、各メーカーは、身体本来のへの機能に対するアプローチとして薄底シューズを販売していたが、市場は運動に対するサポート機能として厚底シューズの需要が高まった。

また、それに目をつけたファッション業界でも厚底シューズブームが到来。

そして、その厚底シューズは、その見た目やクッショニングから、「疲れない」「履いていて楽」という点から広く一般的になり、気がつけば市民権を得ていた。

が、今またミニマムなソールを持つ「ベアフット」が再注目されている。

 


ソールが薄い理由

厚底シューズで「疲れない」「履いてて楽」なら、それに越したことはないように感じる事も多いと思う。ただ、ここまで読まれた方ならお気づきのように、厚底シューズでは、足本来の機能は活かされていない状態になっている。

 

何故、ベアフットシューズは基本的にソールが薄いのか。主な理由は以下の3つ。

 

  1. 足本来の動きを邪魔しない
  2. 接地感
  3. 感覚入力

 

大切な「接地感」と「感覚入力」について

 

接地感とは

「主観的なフィーリング」の事。

「あ!デコボコの地面だな」とか、「硬い地面だな」「ここは特に滑る」とか、足裏にあるセンサーを使って感じる感覚です。違う部位で例えるなら、手のひらから感じる感覚と同じと思ってください。指先で触ってみたら「熱かった」とか、握ってみたら見た目より「柔らかかった」とか。あの感覚と同等の機能が足裏にもあります。そして、人はその足裏の感覚を使って、身体を支えて動かしています。

 

感覚入力とは

「神経学的なプロセス」の事。足裏には無数の受容器(センサー)があり、地面から刺激を受け、その情報を電気信号として脳に送ります。その電気信号を受け取った脳は、「今の姿勢をどう修正するか」「どれくらいの力で着地するか」を計算します。感覚入力は、言わばその生データになります。

厳密に言うと、「感覚入力」という大きな枠組みの中に「接地感」という具体的な感覚が含まれている状態。正しい接地感で得た情報を脳に正しく届ける「感覚入力」があり、そして、脳から送られた指示の元、身体を動かしています。

 

ミッドソールの話に戻ります。

 

ここまで聞くと、なんとなく足の裏から得る情報が如何に大切な事なのかという事が理解出来ると思います。

では逆に、厚いソールで感覚入力が鈍ることで身体に及ぼす悪影響は?

 

大きなポイントとして3つ

 

1)「着地の衝撃」を脳が認識できなくなる

ソールが厚く着地の衝撃を正しく判断できないと、脳が「まだ余裕がある」と勘違いして、必要以上に強く地面に力を伝えようとしてしまいます。また、分厚いクッションで衝撃を正しく判断できない結果、逆に膝や腰の関節を痛めるほどの強い衝撃で着地してしまう場合もあります。特にこの強い衝撃で着地してしまうという点は、「単発的な強い衝撃」というより、走る・歩くの動作の中で小さく起きる連続的な強い衝撃に危険があります。

具体例でいうと、

分厚いソールの靴でランニングをした場合、実際は衝撃は身体に伝わっているのに、感覚が鈍る事で脳は「余裕」があるということ、その衝撃にあった着地の準備を身体に指示しない状態。

逆を言えば、薄いソールの靴を履き、正しく着地の衝撃を脳が認識すると、その衝撃にあわせて身体が、足のアーチ・足首・膝・腰を使い身体のクッションを使い衝撃を吸収する。それと同時に、痛くならないように正しい足の着地を意識するようになります。

 

2)「バランス能力」の低下

足裏のセンサーで得た接地感から、地面の傾斜、デコボコ、硬さを瞬時に読み取り、全身の筋肉に「こう立って!」と指令を出します。ソールが分厚いと、地面の情報が解像度の低い状態になり、脳が姿勢を微調整できなくなります。結果として、足首を捻りやすくなったり、特定の筋肉(外側の筋肉など)だけを使いすぎて疲労したりします。

因みに。人の身体には優秀な補正機能が備わっています。

このバランス能力が低下した状態でも、人は身体を動かす為に、あらゆる部位を使ってバランスを保とうします。

 

イメージしてみてください。

 

裸足で地面に立った時の身体の使い方と、履き潰されて置いてあるだけで傾いているク◯ックスを履いて立った時の身体の使い方を。

 

あきらかに後者は、足の土台(ベース)部分は崩れているのに、足首や膝や腰、それに関わる筋や筋肉が補正をかけてバランスを維持してくれます。ただ、それって身体にとって無駄な負荷ではないですか?

 

3)「足指の死」

靴下や靴で固められ、さらに感覚が入ってこないと、脳は「足の指は使わなくていいパーツだ」と認識してしまいます。結果、指を動かす神経回路が休眠状態になりますが、動かなくなった部位のカバーをする為(代償動作として)、他の部位がその役割をカバーし、結果的にその他の部位に影響が出たりします。

これも、「バランス能力の低下」の部分でお話した補正機能で影響が出てしまうパターンです。分かりやすい例えで言うなら、怪我した足首を庇っていたら、逆足の膝が痛くなるあの症状です。

 

普段足の指は、靴や靴下の中にしまわれている事が多く、意識から遠い存在。なんとなく手だから足だから指が付いていると思われているかもしれませんが、足の指にも実は大きな機能と役割があります。ただ、ここを意識的に使えている方は、まだまだ少なく、結果、足の指が使えない事が原因で、他の部位がカバーし補正を行い、結果的にその部位がキャパオーバーになり痛みや変形に繋がる事があります。

 

ここまでのお話を聞いて、「そんなに足裏の感覚って大事?」と、思う方もいるかもしれませんが、人は、足裏以外の感覚も含めて、いろいろな感覚を使って動作を行っています。

 

「立つ」という単純な行為も同じです。

 

 

簡単なテストとして、片足立ちで目を開いた状態と目を閉じた状態でタイムを計ってみてください。

 

目を閉じ視覚情報がなくなった途端に、バランスは著しく低下します。

そして、目を閉じたその瞬間に、我々は意識的に足裏から沢山の情報を得ようと意識を集中させます。が、その瞬間に自分の足の感覚の鈍さや、自身で足がコントロール出来ない事に気付くと思います。

 

これは、単純にバランス感が無いという点もありますが、そもそも、そのバランス感を出すための感覚的機能が低下していると捉える方が正しいと思います。

 


Barefoot Journal #1~#3の纏め

ここまでが、moderateがベアフットシューズをお勧めする理由の為の前提のお話になりました。

 

少しまとめると。

  • 人は身体をサポートする靴を履くことで、足本来の機能が低下している。
  • 低下した身体の機能をカバーする補正機能が原因で、他の部位に大きな負担をかけている。

(あ、2行で纏めれた・・・)

 

次回は、「#4 ベアフットは『用法用量』が大切 」についてお話していきます。

 

 

 

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